ちょっと(かなり)不気味なシルバーリングを作ったので制作過程や作り方などをご紹介します。なかなか売ってなさげな個性的な指輪に仕上がりました。
シルバーリングの作り方①ワックスを削る
シルバーアクセサリーを手作りする方法はたくさんありますが、今回はロストワックス方式のやり方をご紹介します。
ロストワックスの手順を簡単に説明すると
『ワックスと呼ばれる樹脂を削って成形する』
↓
『キャスト屋さんに成形後のワックスを送り、銀にしてもらう(鋳造)』
となります。
地金を直接削る『彫金』よりハードルが低く、『銀粘土』よりも複雑なデザインの物が作れるので、初心者の方にもおすすめの製造方法です。
まずはワックスと呼ばれる樹脂の塊を用意します。
ワックスは指輪制作に特化したチューブワックス(はじめから指を通す穴が空いている)や塊のブロックワックスなど様々な種類があります。
チューブワックスは指輪しか作れませんが、ブロックワックスはリングを作った残りを使ってペンダントなども作れます。
ワックスは基本的に青、紫、緑に色分けされていて、それぞれ硬さが違います。初心者の方は一番やわらかいブルーワックスがおすすめです。
リングに指を通す穴を開ける
指を通す穴はリーマーと呼ばれる穴あけ専用のヤスリを使用します。
ワックスは後に銀にする時1.5倍ほど収縮するので、サイズ的に1号程度大きめに穴を開けておくと良いです。
ワックスに開けた穴に指を入れた時『1ミリ程度隙間があるくらい』でキャストに出すのがおすすめです。
ざっくり削って指輪の形を整える
お好みのデザインに沿ってざっくり彫っていきます。ブルーワックスは柔らかめなのでとにかく成形が楽!
ワックス用の粗めのヤスリを使用するとザクザク削れてスムーズですよ。
細部はカービング用のスパチュラで造形していきます。シーフォースさんのスパチュラは安価で高性能なので僕も愛用中♪
【ワックス成形のコツ】
- 表面を削るとマーキングした箇所が消えちゃうので、その都度書き直す。
- ある程度形が整ったらカービング用スパチュラで細部を造形する。
リングの表面を滑らかにする
成形が終わったら目の細かいヤスリで傷を取っていきます。このキズ取りはワックスの段階で完璧にしておくと鋳造後の仕上げが楽になります。
3M製のスポンジヤスリはワックス表面のキズ取りにおすすめです。特にリングなどの湾曲したデザインに適しています。
粗め、普通、細かめの三種類を揃えておくと便利。ワックスだけでなくシルバー製品にも使えます。
シルバーリングの作り方:細部をスパチュラで成形する
口の中や歯の隙間などの細かい箇所は先端がカーブしたスパチュラで成形すると効率が良いです。
ワックスフィニッシュはワックスの表面を薄~く溶かす液体。細かいキズ取りの時短につながります。液体を軽くティッシュに浸して使用します。(無くても大丈夫ですが、あると便利です)
指輪の内側を中抜きする
中抜きをします。中抜きとは肉厚な部分のワックスを取り除き、軽量化すること。これにより銀にする際の価格を大幅に抑えることが出来ます。
↑リング内側の削られた部分が中抜き後の状態です。
貧乏くせーなーと思われる方もいるかもしれませんが、中抜きをすることで指に接する面積が少なくなり、着脱がスムーズになるメリットもあります。良いことずくめなので絶対にやりましょう♪
ただ、あまり調子にのって中抜きし過ぎると薄くなりすぎて破損の原因につながるので、ここは時間をかけて慎重に行いましょう。このリングの場合、一番薄い部分は1ミリ程度の厚みです。
中抜きに使用する道具は先ほどご紹介したカービング用スパチュラの先端が丸形のヤツ(正式名称不明^^;)がおすすめです。
いよいよシルバーに!鋳造(キャスト)に出します。
ワックスの成形が完了しました。これを鋳造(キャスト)に出してシルバー(銀)にしてもらいます。
鋳造してくれる会社はたくさんありますが、キャスト代金、送料、納期などに差があります。ここは自分にあったキャスト屋さんを選ぶことをおすすめします。
僕は関東住みなので井島貴金属さんもしくはシーフォースさんに依頼することが多いです。
鋳造だけなら井島貴金属(納期や料金を電話で連絡してくれるので便利)、鋳造と同時に何か工具を注文するときはシーフォース、って感じで選んでます。
キャストから帰ってきたシルバーリングを成形する。
キャストに出すと一週間程度で銀になって返ってきます。この瞬間が一番テンション上がります。
湯道を取る
さっそく仕上げ…の前に、まずは湯道を取り除きましょう。(画像はすでに湯道を取った状態)
湯道とはワックスを鋳造(ちゅうぞう)する際に必要だった、銀を流すストローのような管のことです。
キャストから帰ってきたシルバー作品は、この湯道の残りが5mmほど付いたままになっています。※キャスト屋さんによっては湯道を除去するサービスもやっている(別料金)。
湯道は金属用ヤスリやリューターで削るのが一般的ですが、もし湯道が長く(1cm以上)残っている場合は糸鋸(いとのこ)で短く切断した後にヤスリで削ると楽です。
湯道を除去した後にサイズの微調整をします。
ワックスの状態ではちょっとユルかった指輪も、キャストに出すと1.5倍前後縮まるのでほぼジャストサイズになっているはず。もしキツイ場合はリングの内側を金属ヤスリ(彫金用)で削って径を広げます。
※サイズ調整は内側を均等に削ることを意識しましょう。
※銀を削る際はかならず金属ヤスリを使用して下さい。ワックス用ヤスリだと刃をダメにしてしまいます。
シルバーリングに燻しを入れる
リングのサイズ調整が終わったら軽く燻し(いぶし)を入れます。
燻しを入れると凹んだ部分が黒く染まるので、キズの場所がわかりやすくなります。さらに、立体感が出るので作品の完成像がイメージしやすくなりますよ。
燻し剤(硫化剤)はたくさん種類があるので好みのモノを見つけましょう。僕は薄めずに使える『銀黒』が手軽なので愛用しています。
バンダナ部分にファイアー柄を施すためUVエポキシ樹脂でカラーリングしました。UVエポキシは紫外線で硬化するカラーリング材で、色付けに便利です。(UVライト、もしくは太陽光で硬化する)
シーフォース社のオリジナルUVエポキシ『カラメル』はカラーが豊富で、色も混ぜられるのでおすすめです。
これで完成!…としばらく使っていたのですが、ちょっとカスタマイズしたくなったので、バンダナ部分をミルタガネで荒らしてみました。
ますます不気味!
人面のシルバーリングを作ってみたい方はぜひ参考にしてくださいね!
●今回ご紹介した工具や素材はシーフォースが運営する【クラフトショップNAVI】で購入出来ます。
今回のようなロストワックス式リングを作る際のマストアイテムをまとめました。
- ワックス(これがないと始まらない)
- ワックス切断用ののこぎり(ザクザク切れる物がおすすめ)
- リーマー(指を通す穴を開けるのに必要)
- スパチュラ、ワックス用ヤスリ(造形に必要)
- スポンジヤスリ(傷取り、仕上げに必要)
- 彫金用ヤスリ(銀にしてからリングサイズ修正などに必要。”半丸ヤスリ”が便利)